「理想」と「現実」の間にブランドは眠っている
「競合を徹底分析して、差別化しよう」
そう意気込み、競合のウェブサイト/SNS/広告をすべて調べ上げた結果、半年後、自社のブランドメッセージは競合と見分けがつかなくなっていた。
なぜ、このようなことが起こるのか。 その理由は、競合を意識しすぎたからではない。ブランドの中に潜む「矛盾」を言語化していないからだ。
「『差別化』をするほど、ブランドは個性を失っていく。」
この現象の正体は、『外部への意識』ではなく『内部にある矛盾の放置』だ。
差別化の「構造的欠陥」
多くの人が「テレビは何を見ても同じ」と言う。確かに、多くは同じに見える。ターゲットが類似し、同じように限られたリソースの中で、出てくる企画はおのずと似通ってくる。
企画側は差別化を図ろうと懸命に工夫を重ねている。それでも結果は、同じような番組の繰り返し。その中でなぜ、一握りの番組だけが生き残るのか。
その答えは、「ブランドの中に潜む矛盾を言語化しているか否か」にある。
「理想」と「現実」の深い溝
ブランドが外部に提示する「理想」と、内部に抱える「現実」。その間に存在する、言語化されていない矛盾(葛藤)を認識できているか。
あるクイズ番組の制作者は、視聴者に「夢中になって見てほしい」と願っているかもしれない。しかし、視聴者がそこいる理由は、
- 家族が一緒にいられる時間ができるから
- 寂しい夕食の時間を耐えるため
- 他に選ぶものがないから
制作者の「理想」と、視聴者の「現実」の間には、深い溝がある。
コンテンツを提供する側がこれを認識しているか否かで、ブランディングの方法は180度かわる。
「現実」のどこをすくい上げ、どのような方法でそれに応え、「他とは違う」と感じさせるのか。
すべてはここにかかっている。
優れた出演者は、瞬時にこれを感じ取り「言語化」していく。そう思ってTVを見れば、あなたもその事実に気づく。
「いや、お父さん今寝たふりしてるって!クイズどころじゃなくて、疲れてるのよ」
メタ視点から、一瞬で空気を変えていく。それが積み重なり、ブランド(番組)の個性を決定づける要素になっていく。
矛盾を「ブランドのコア」にする
事業のブランディングにおいても、意識されていない「矛盾」の言語化が、他社には真似のできない差別化の起点となる。
- 「業界のイノベーターでありたい」 という理想と、 「既存事業のしがらみから抜け出せない」 という現実
- 「すべての人に愛されたい」 という願望と、 「誰かから嫌われなければ、本当のファンは生まれない」 という現実
この矛盾を隠すのではなく、言語化し、葛藤をブランドのコアに据える。それが、真の差別化を生む。
歴史や文脈といった『動かしがたい現実』と、今のニーズに応えるという『理想』。
「矛盾」の言語化。
それが、ブランドを唯一無二のものにする。