Perspectives

「理想」と「現実」のあいだに、本当のブランドは眠っている

yhongo2025@gmail.com

「競合を徹底分析して、差別化しよう」
そう意気込み、競合のウェブサイト/SNS/広告をすべて調べ上げた結果、半年後、自社のブランドメッセージは競合と見分けがつかなくなっていた。

なぜ、このようなことが起こるのか。 その理由は、競合を意識しすぎたからではありません。ブランドの中に潜む「矛盾」を言語化していないからなのです。

「『差別化』をするほど、ブランドは個性を失っていく。」

この現象の正体は、『外部への意識』ではなく『内部にある矛盾の放置』なのです。

テレビ業界に見る、差別化の「構造的欠陥」

多くの人が「テレビは何を見ても同じ」と感じています。確かに、多くは同じに見えます。ターゲットが類似し、限られたリソースの中で、出てくる企画はおのずと似通ってくるからです。

しかし、企画側は差別化を図ろうと懸命に工夫を重ねています。それでも結果は、同じような番組の繰り返し。その中でなぜ、一握りの番組だけが生き残るのでしょうか。

その答えもやはり、「ブランドの中に潜む矛盾を言語化しているか否か」にあります。

「理想」と「現実」の深い溝

ブランドが外部に提示する「理想」と、内部に抱える「現実」。その間に存在する、言語化されていない矛盾(葛藤)を認識できているか。

例えば、あるクイズ番組の制作者は、視聴者に「夢中になって見てほしい」と願っているかもしれません。しかし、モニター前の視聴者の「現実」は多様です。

  • ただクイズが好きだから
  • 家族が一緒にいられる時間ができるから
  • 寂しい夕食の時間を耐えるため
  • 他に選ぶものがないから

制作者の「理想」と、視聴者の「現実」の間には、深い溝があります。

コンテンツを提供する側がこれを認識しているか否かで、ブランディングの方法は180度変わります。

「現実」のどこをすくい上げ、どのような方法でそれに応え、「他とは違う」と感じさせるのか。

すべてはここにかかっています。

優れた出演者は、瞬時にこれを感じ取って「言語化」していきます。そう思ってTVを見れば、あなたもその事実に気づくことでしょう。

「いや、お父さん今寝たふりしてるって!クイズどころじゃなくて、疲れてるのよ」

と、メタ視点とも言える空気感を、一瞬で作り出したりします。結果的にそれが積み重なり、ブランド(番組)の個性を決定づける要素になっていくのです。

矛盾を「ブランドのコア」にする

事業のブランディングにおいても、意識されていない「矛盾」の言語化が、他社には真似のできない差別化の起点となります。

  • 「業界のイノベーターでありたい」 という理想と、 「既存事業のしがらみから抜け出せない」 という現実。
  • 「すべての人に愛されたい」 という願望と、 「誰かから嫌われなければ、本当のファンは生まれない」 という現実。

この矛盾を隠すのではなく、言語化し、葛藤をブランドのコアに据える。それが、真の差別化を生むのです。

先日、ある地方のプロジェクトに携わった際も、このことを改めて確信しました。

歴史や文脈といった『動かしがたい現実』と、現代のニーズという『理想』。その矛盾をどう言語化していくかが、全ての鍵になるのです。

「矛盾」の言語化。

それが、ブランドを唯一無二のものとするのです。

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