同じ日本語を話していても、戦略には「翻訳」が必要
英語しか理解しない取引相手に、日本語で話し続けることはないはずです。
誰かに通訳をお願いしたり、語学に堪能なメンバーを参加させたりして、交渉を進めることになるでしょう。
そのとき、内容が「きちんと」伝わっているか不安になることはないでしょうか。
リーダーにとっての「きちんと」とは、プロジェクトを進めるスピードや規模感、拡張可能性、さらには言葉の裏側にある意図やキーワードの広がりに至るまで、そのすべてを含んだ意味での「きちんと」です。
実はこれと同じ問題は、同じ日本語を話すメンバーとの間でも日常的に生じています。
リーダーであるあなたが決めた「戦略」。
これが「言葉」に置き換えられ、それぞれの担当者に正確に伝わっている可能性は、もしかすると50%を切っているかもしれません。
営業、マーケティング、デザイン……。
それぞれに向けて伝わるように、多言語でコミュニケーションを取る必要があるのです。
つまり、「戦略」は1つではなく、リーダーは自らの「戦略」をいくつもの言葉を使い分けて話さなくてはならないのです。
「多言語」で話すとは
オーケストラの指揮者は、楽器の特性を理解した上で、それぞれの担当演奏者へ伝わる「言語」を用いて具体的な指示を出します。
私が身を置いていたTV業界の総合演出という仕事も、それに近いものでした。
コンテンツを生み出す過程で、同時進行で動く各パートに対し、彼らが理解できる言語で指示を出していきます。
照明に指示を出す言語、音声に指示を出す言語、そして出演者に指示を出す言語…。これらは、内容も性質もまったく異なるものです。
当たり前のことのように思えますが、これができていない現場は少なくありません。
プロジェクトのコンセプトやテーマが決まれば、全員が共通の理解で進めてくれると思い込んでしまう。
目の前で人々が動いているという事実だけで、「伝わっている」と勘違いし、安心してしまうのです。
他にも例えば、具体的な数字が動く「戦術」の報告を耳にして、つい安堵を覚えてしまうこともあるかもしれません。
「言葉の構造」が組織を動かす
戦略は、プロジェクトの存在意義を「言語化」し、矛盾のない、それぞれに理解可能な「言葉の構造」となったときに動き出します。
言語化されていない戦略が引き起こす「多言語問題」に気づくことができなければ、どんなに優秀な人材を集めたとしても、彼らのエネルギーは実を結ばず消えていきます。
まず「戦略」を、多言語の起点となる「矛盾のない『言葉の構造』」として設計する。
この「戦略」を多言語で語っていくのです。
違和感なく、自分の「戦略」がスタッフに伝わったとき、彼らの動きはあなたに新しい刺激を与え、それがまた次の「問い」や「コンセプト」へと循環しはじめるはずです。